企業の貸借対照表(BS)には現れないが、確実に企業価値を形成しているもの。それが「簿外資産(off-balance-sheet assets)」と呼ばれる存在です。
ブランド、人的資本、信用履歴、ノウハウ。そして近年、その最前列に加わったのが「SNSアカウント」です。
SNSは「ストック資産」になっているか?
SNSは多くの経営者にとって「フロー施策」。投稿したら終わり、バズれば一過性の露出と捉えられがちです。しかし実際は、SNSアカウント自体が再現性ある集客装置であり、事業収益に直接リンクするストック資産として機能します。
フォロワー1万人のインスタグラムは、月10万円の広告を無償で打てる権利とも言える。YouTube登録者1万人であれば、講演・販売・採用・PRの接点をメディア経費ゼロで持ち続けられる。もしくは企業案件を受けることができれば、月に何万円もの金を生む資産となり得る。
これは明らかに「簿外に存在する営業資産」です。
SNSの簿外資産性を高める3要素
- 権威性(Authority)
フォロワー(ファン)が多く、実績がストーリーとして蓄積されていること。それが信用残高を作る。 - 継続性(Continuity)
1本の投稿が強くても意味はない。アルゴリズムと記憶に残るためには継続が必要。アカウントは“蓄積”に価値が宿る。 - 収益性(Monetizability)
SNSのゴールは「エンゲージメント」ではなく「収益装置化」。単なる自己表現ではなく、売上への転換装置として設計できて初めて、資産となる。
譲渡可能性=簿外資産の真価
本質的な資産とは、「譲渡可能であるかどうか」にあります。SNSアカウントが法人名義で運用され、コンテンツと運用方針が体系化されていれば、M&A時の引き継ぎ対象となります。実際、SNSフォロワーの規模やアカウント運用の実績は、近年中小企業の企業価値評価において補助的要素として評価されるケースが増えています。
マーケティング費ゼロで集客できる体制を持っているか?
これは営業コストの将来割引価値を問う、極めて財務的な議論です。将来の広告費・営業費用の“削減効果”を、今この時点で資産として見積もろうとするのが「割引現在価値(Present Value)」の発想です。例えば、
- 年間で広告費が200万円削減できるSNSアカウント
- この削減が今後5年間続くと仮定
- 割引率を5%とする
ならば、
PV = 200万円 ÷ (1.05)^1 + 200万円 ÷ (1.05)^2 + … + 200万円 ÷ (1.05)^5
という具合に計算し、このアカウントは「今の価値で約860万円分の価値がある」と評価できるということになります。
SNSは、信用創造のメディアでもある
SNSは単なる情報発信のツールではなく、信用を創造し、実績を可視化するメディアです。そして、その信用残高は時として売上残高以上に企業の生存力を左右します。
企業の財務において、金利を下げるのは担保よりも“信用”。SNSはその“見えない担保力”を生む装置でもあります。
【まとめ】
- SNSアカウントは、簿外に存在する優良な営業資産
- 継続・収益化・譲渡性が資産化のカギ
- 信用創造装置としてのSNS運用は、経営レイヤーの意思決定領域である
マネジャー株式会社では、こうした無形資産やSNS含む営業装置の評価、事業価値への取り込み方について財務顧問としての支援を行っています。当社も富山県のグルメをPRするインスタグラムアカウント「北陸グルメ探検隊」を運営しており、収益を生む資産として活用しています。
“見えない資産”を“価値に変える”視点を持ちたい経営者の方は、ぜひご相談ください。