資金繰りが不安定な企業と、安定的な企業。その差はどこにあるのでしょうか。
その核心は、「将来にかかるお金をどれだけ明確に認識できているか」という一点に尽きると考えています。
資金繰りの本質とは、「収支のタイミング」や「運転資金」だけの問題ではありません。
未来に発生する支出を、どこまで“既知のもの”として扱えるかどうかなのです。
資金繰りを制する経営者が持つ最大の特徴といえます。
◆ 資金繰りが悪化する企業の特徴とは、支出が「読めない」
資金繰りに苦戦している企業に共通するのは、
変動費率が高く、しかも“変動の要因”を把握していないことです。
仕入、外注、販促費、人件費、事務経費。
毎月異なる支出が発生すること自体は問題ではありません。
問題なのは、その支出を“可視化”せずに感覚的に回している点にあります。
◆ 資金繰りが健全な企業は「経費を固定費として捉えている」
対照的に、資金繰りが安定している企業は、
実際の支出が変動していても、それらを“あらかじめ予定された固定費”のように認識しています。
これは、単に支出を定額化しているという意味ではありません。
もっと重要なのは、経費の発生タイミングと金額を“前もって設計・予測”しているという点です。
たとえば、
- 「来期は○人の人員で回すため、人件費は月額〇〇万円」
- 「広告予算は年間〇〇万円で分配する」
- 「季節要因による仕入変動は±〇〇万円だ」
このように、変動費さえも“擬似的な固定費”として扱っている。
これが資金繰りが上手な経営者の管理力の正体です。
◆ “全経費を固定費としてみる”という意識
重要なのは、実際の会計区分としての「固定費」「変動費」とは別の話であるという点です。
財務的に言えば、材料費は変動費、人件費は固定費ですが、
資金繰りの観点では、「どれだけ読めるか」「事前に見込めるか」こそ最優先事項です。
つまり、経営においては、
「全ての経費は、固定費として“見る”ことができる」
→ だからこそ、将来必要となるお金を、今のうちに準備しておける
この視座に立てるかどうかが、資金繰り巧者への第一歩なのです。
◆ 実務に落とし込む:固定費的に“見積もる”訓練
「事業計画における経費予測精度の向上」が重要といえます。
- すべての支出に“予算”を設け、実績と比較する習慣をつける
- “たまたま”起こった支出を“次回の前提条件”として反映する
- 「例年〇月に支出が多い」などの傾向を”数値”として理解する
この繰り返しによって、どんなに変動が多い事業であっても、
まるで固定費のように、先読みできる仕組みが構築されていきます。
マネジャー株式会社の経費はすべて固定費です。
人件費、家賃、交通費、外注費、交際費、税金・・・これら全てを固定費として考えているため、年度予算を正確に判断でき、今年度どれだけの売上が必要なのかもメンバーが深い理解を持って共有することができます。
◆ まとめ:「支出の固定可視化=資金繰りの力」
- 資金繰りが苦しい企業は、変動費に無自覚
- 資金繰りが上手な企業は、変動費でさえ固定費のように捉える
- 最終的には「全経費を固定費として扱える視点」が資金繰りの完成形
「売上は運だが、支出は戦略で制御できる」──
この姿勢を貫ける経営こそ、強靭な資金繰りを実現します。