経営について相談をいただいた際、事業の将来性を測る上で「ビジネスモデルの構造的な強さ」に触れる機会が多くあります。
その一つの見方として、受注の継続性と専門性という2軸から、ビジネスモデルを4つに分類してみます。
この分類は、目先の売上や利益よりも、事業の粘り強さや再現性を見るうえで重要です。
◆ ビジネスモデル4象限マトリクス
専門性が高い | 専門性が低い | |
---|---|---|
継続受注 | ① 継続×専門:最も強いビジネスモデル | ② 継続×汎用:安定はあるが価格競争に弱い |
単発受注 | ③ 単発×専門:単価は高いが再現性に欠ける | ④ 単発×汎用:最も厳しい。下請的・労働集約型になりやすい |
① 継続受注 × 専門性が高いビジネス:最強のビジネスモデル
この象限に属するビジネスは、「専門的かつリピートが前提となる関係性構築型ビジネス」です。
たとえば、
- 安定需要のある機器メーカーの特殊部品製造
- サブスクリプション型のBtoB SaaS(業務特化型)
- 特定業界向けのITソリューションや保守サービス
このタイプは、一度信頼関係を築けば高単価・長期契約・競合排除が可能。
顧客が乗り換えるコスト(スイッチングコスト)も高く、強固な収益構造をつくることができます。
経営資源は「営業」ではなく「価値の深化」に振り向けることができ、成長性・収益性の両立が可能です。
② 継続受注 × 専門性が低いビジネス:安定型だが収益は頭打ち
この象限に属するのは、定常的に利用されるが、代替が容易なサービスです。
たとえば、
- 清掃業、ビルメンテナンス、警備などの施設管理
- 一般的な事務派遣や、業種特化しないアウトソーシング
受注が継続するため、売上の見通しは立てやすいものの、専門性が低いため価格競争に晒されやすいのが課題。
また、差別化が困難で、スケールには“人手の投入”が伴うことが多く、労働集約型になりがちです。
このモデルで安定経営を目指すなら、「契約の長期化」「業界特化による準専門性の獲得」などが鍵になります。
③ 単発受注 × 専門性が高いビジネス:フリーランスやプロフェッショナル型
この象限では、高度なスキルによるスポット収益が得られるが、受注の“継続性”に課題があります。
たとえば、
- プログラマーやデザイナーの単発プロジェクト
- 設計・開発・建築などの専門職の請負型ビジネス
- 士業のスポット案件(相続、事業承継など)
一件あたりの単価は高く、利益率も優れている一方で、受注が途切れれば即座に売上が消えるという脆さもあります。
また、営業コストが常に発生し、“自分が動かないと稼げない”構造に陥りやすい点もリスクです。
このタイプの事業者が次のステージに進むには、「継続化する仕組み」か「チーム化・法人化によるスケール」の検討が必要です。
④ 単発受注 × 専門性が低いビジネス:最も脆弱なモデル
この象限に属するのは、代替可能性が高く、顧客との関係も一過性という最もリスクの高いビジネスです。
たとえば、
- 一般消費者向けの単発サービス
- ブームに乗った飲食店
- ウェブサイト・LP制作の格安請負など
典型的な「労働力の切り売り型」ビジネスで、常に営業に追われる構造です。
また参入障壁が低いため、価格競争の泥沼に巻き込まれやすい。
このようなビジネスモデルは、長期的に見て人材の疲弊や資金繰りの悪化を招きやすいため、
戦略的に、継続性もしくは専門性を持たせて「上位象限へのシフト」が推奨されます。
◆ まとめ:目指すべきは「継続 × 専門」といえます
事業を継続的に成長させるためには、どの象限に自社が属しているのかを冷静に見極める必要があります。
この2つがそろって初めて、“強い事業”として残り続ける可能性が高まります。
もし、今のビジネスが③や④に近いと感じるなら、
「定期収益化」や「専門分野への特化」をキーワードに事業の再設計を進めてみてください。